空き瓶吹き

目覚める。

なにかを喪失した感じがするが、思い出せない。
なにせ、喪失しているので。
だから、なにかを喪失した感じだけ大事に抱えている。
だって、それすらもなくしてしまったら本当になくなっちゃうから。

嘘をつきたいわけじゃない。ただ、気持ちを外に届けようと開封した瞬間に酸化が始まってしまうというだけだ。

ひとの気持ちはお菓子の袋。閉じたまんまでさわっていたい。

破いた袋を捨てられないまま、じいっと覗き込んでいる。
本当は、ここには何があったんだろう?