選ばなかったほう

一日、重い雨。こういう日はうまく朝が来ない。一日夜みたいに過ごす。

体感で三日くらい前に行った洋食屋でエビグラタンが食べたかった気持ちを忘れられない。エビグラタンが食べたかったから食べればよかったのに食べなかった。オムライスを食べると決めて入店したのだからオムライスを食べなければならないだろう、と、変に真面目になってしまった。オムライスを運んできてくれた店員さんに独特の雰囲気があった。これは絶対に俳優だろうなと思って、失礼ながらお名前を検索してしまったのだが、俳優じゃなかった。お笑い芸人だった。

人生において「選ばなかったほう」は、大抵ずうっと後ろの方で延々と魅力的な感じであり続ける。

約300グラムで598円もする冷凍むきエビを買ってしまった。マカロニを茹でて、きのことチーズとエビと合わせる。こしょうをかける。うちにオーブンはない。欲しいけどない。置く場所がない。オーブンを定期的に掃除して衛生的に保つ気力もない。だからオーブン料理は外に食べに行く。家では、マカロニを茹でてきのことチーズとエビを合わせたやつでお茶をにごす。

「選ばなかったほう」の色々、なんだか色々あった気がする。注意深く、忘れた。エビグラタンのようなものを食べて眠る。